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年収665万円の「崖」
1円超えると手取りが約3.7万円減る理由

公開日: 対象:2026年(令和8年分)の所得税

所得税は「超えた部分だけ」に高い税率がかかる仕組みなので、昇給して手取りが減ることは普通ありません。ところが2026年分は例外があります。令和8年度の税制改正で、所得税の基礎控除が年収によって段階的に変わるようになったためです。当サイトの年収手取り計算で、境目の前後を1,000円単位で計算してみました。

📊 計算してわかったこと:665.5万円→665.6万円で、手取りが37,126円減る

年収(額面)を1,000円増やしただけで、所得税が193,173円→231,052円と37,879円増え、手取りは37,126円減りました。元の手取りに戻るのは年収671万円です。

年収基礎控除手取り(円)665.5万との差(円)
660万104万5,088,913−38,601
665万104万5,123,858−3,656
665.5万104万5,127,514基準
665.6万67万5,090,388−37,126
666万67万5,093,191−34,323
668万67万5,107,210−20,304
670万67万5,121,228−6,286
671万67万5,128,137+623(ここで回復)

つまり年収665.6万〜670.9万円の人は、665.5万円の人より手取りが少ないことになります。約5.5万円ぶんの昇給が、手取りには反映されない区間です。

※ 独身・扶養なし・40歳未満・給与収入のみ、社会保険料は協会けんぽ全国平均の料率(年収の約14.75%)、住民税は所得割10%+均等割5,000円で計算。数値は年収手取り計算に同じ年収を入れると再現できます。

なぜ段差ができるのか

所得税の税率(5%・10%・20%…)は、課税所得のうち境目を超えた部分だけに高い税率がかかります。そのため税率が上がっても、手取りが減ることはありません。

一方、基礎控除は境目を1円でも超えると、控除の額そのものが切り替わります。2026年分(令和8年分)の基礎控除は次のとおりです。

合計所得金額給与収入だけの場合の年収基礎控除(令和8・9年分)
489万円以下665万5,556円以下104万円
489万円超 655万円以下665万5,556円超 850万円以下67万円
655万円超 2,350万円以下850万円超 2,545万円以下62万円

出典:国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」。本則62万円に、合計所得489万円以下は42万円、655万円以下は5万円が上乗せされます。

年収665万5,556円を超えると、基礎控除が一度に37万円減ります。課税所得が37万円増えるので、所得税率10%の人なら約3.8万円(復興特別所得税を含む)税金が増えます。これが「崖」の正体です。1,000円の昇給ではとても埋まらず、埋まるまでに約5.5万円の昇給が必要でした。

年収850万円にも小さな段差がある

同じ仕組みで、合計所得655万円(年収850万円)を超えると基礎控除が67万円→62万円に下がります。こちらは5万円の差なので段差は小さめです。

年収基礎控除手取り(円)850万との差(円)
850万67万6,291,080基準
850.1万62万6,281,509−9,571
851万62万6,287,572−3,508
851.6万62万6,291,410+330(ここで回復)

所得税は850万円で521,220円、850.1万円で531,635円(+10,415円)でした。23歳未満の子どもがいるなどで「所得金額調整控除」を受ける人は、合計所得が下がるため、この850万円の境目の位置がずれます。

どんな人に関係する?

iDeCoやふるさと納税では避けられない

「iDeCoで所得を減らせば崖を避けられるのでは」と考えがちですが、避けられません。基礎控除の額を決めるのは、所得控除を引く前の「合計所得金額」だからです。

ただしiDeCoは、課税所得を減らすので所得税・住民税そのものは確実に減ります。崖とは関係なく、節税としての効果はそのままです(iDeCo節税額シミュレーター)。

なお、この年収帯(独身で647万〜687万円)は、2026年分のふるさと納税を確定申告で控除すると自己負担が2,000円を超える年収帯とも重なります。上限まで寄付して確定申告すると、年収671万円で自己負担は約1.2万円でした(ワンストップ特例なら2,000円。くわしくは「ふるさと納税「実質2,000円」が崩れる人」)(ふるさと納税 限度額シミュレーター)。

いつ反映される?

2026年分の改正は、2026年12月の年末調整でまとめて精算されます。11月までの毎月の給与からの天引きは、改正前の源泉徴収税額表のままです(国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」)。

このため、年収が665万円前後の人は、年末調整で戻ってくる額が、同僚と比べて数万円違うことがあります。還付額が思ったより少なかったときは、この段差が理由かもしれません。

この段差はいつまで?

基礎控除の上乗せ(最大42万円)は令和8年分・令和9年分(2026年・2027年)の措置です。令和10年分以後は、合計所得金額132万円超の基礎控除が一律62万円になる予定で、年収665万円付近の段差はなくなります。

よくある質問

年収665万円ちょうどなら大丈夫?
はい。境目は給与収入665万5,556円(合計所得489万円)です。年収665万円なら基礎控除は104万円のままです。
住民税にも同じ段差がある?
ありません。住民税の基礎控除は43万円で、今回の改正の対象外です(年収665万円付近で住民税の控除額は変わりません)。この段差は所得税だけの話です。
自分の場合を計算するには?
年収手取り計算に年収を入れると、2026年分のルールで手取り・所得税・住民税がわかります。境目の前後(例:665.5と665.6)を入れて比べると、この段差を確認できます。
ご注意:本記事は2026年9月時点の法令(令和8年度税制改正後)にもとづく計算例です。独身・扶養なし・40歳未満・給与収入のみを前提とし、社会保険料は概算、各種の所得控除は考慮していません。実際の税額は年末調整・確定申告の内容で変わります。正確な取り扱いは勤務先・税務署・税理士等にご確認ください。